Q&A

2025.12.25

【Q&A】019 理事長が亡くなったら

Q

医療法人社団の理事長が亡くなり、相続が発生しました。出資持分や社員、理事、理事長の地位は相続されますか。相続税は発生しますか。

 

 

A

 

1.出資持分の相続について

いわゆる持分あり医療法人の場合、「出資持分」は金銭的価値のある財産として相続の対象になります。 医療法人が持分ありなのか、持分なしなのかは、定款を確認していただいたら分かります。まず定款の確認が最優先です。

そして持分あり医療法人の場合で、被相続人(亡くなった人)が出資持分を持っていた場合、出資持分は相続の対象となるとともに、相続税も課税されます。

医療法人の出資持分は上場株式のように市場価格がないため税務上は「取引相場のない株式」として評価されます。

問題は、長年黒字経営を続けてきた医療法人の場合、出資持分の相続税評価額が想定以上に高額になり、億単位の相続税が発生することも珍しくないことです。出資持分の評価額はあくまで観念的なもので、預金や上場株式のようにすぐに現金化できるわけでもないので、相続人が納税資金の確保に困ったり、相続人から出資持分の払い戻しを求められた医療法人が存続に窮するケースも見受けられます。

 

2.社員・理事の地位の承継について

誤解が多い点ですが、「社員」や「理事・理事長」の地位は、自動的に相続人に相続されません。 例えば社員の地位は一身専属的な権利であり、社員は死亡により資格を喪失する旨定款に記載されているのが一般的です。後継者が社員の地位に就くには、改めて社員総会を開催してもらい、社員として入社を認めてもらう必要があります。

理事の地位についても、死亡により医療法人との委任契約は終了するので、後継者が理事の地位に就くには、改めて社員総会を開催し、理事として選任される必要があります。

理事長の地位も、相続されず、後継者は理事会で新たに理事長として選任される必要があります。なお、医療法人の理事長は原則として「医師または歯科医師」でなければならないとされていますので、ご注意ください。

 

3.相続税の納税猶予・免除制度の活用

理事長が亡くなった後、相続税の申告期限までに厚生労働省へ持分なし医療法人への移行計画を提出し、認定を受け、納税猶予の申請を行い、その後、定められた期間内に実際に持分なし医療法人への移行を完了し持分を放棄することで猶予された相続税が免除されるという制度です。出資持分の評価が高額になり、相続税の納税に困る場合は、検討する余地があります。ただし、そのための要件が複雑で専門的ですので、その分野に精通した専門家への相談が必要になります。

 

このように医療法人の理事長に相続が発生した場合、後継者や相続人にとって、相続財産や相続税の金額がどれくらいになるか、遺産分割をどのように行うかだけでなく、その後の医療法人とどのように関わるのか、についても難しく悩ましい課題となります。その課題の解決には法務、税務の知識、経験が不可欠です。

 

医療法人の役員の相続の際の手続きについてお困りの際は弁護士法人海星事務所までご相談ください。